
近年稀に見る不況により、デパートなどに足を運ぶ機会が減った人も多いのではないだろうか。デパートは何もかもが高いし、気後れしてしまって苦手という人も少なからずいるはずだ。
不振が続く百貨店に変わって、新たな消費の場として注目を集めているのが「駅ナカ」だ。JR東日本企画の研究機関「駅消費研究センター」が2010年3月に発表した調査では、駅ナカや駅関連施設で買い物をする人が駅利用者の半数近くにも上ることが判明した。駅で買うものといえば、キオスクで飲料や新聞などといったものが一般的だったが、駅で買うものが「ちょっと贅沢なブランド品」に変わりつつある。
駅の改札内や駅構内にショッピングモールが次々と建ち始めたのはここ10年のこと。JR東日本が展開する「エキュート」や東京メトロが展開する「エチカ」、近鉄が展開する「タイムズプレイス」など、各鉄道会社が主体となり、駅構内に次々とショッピングモールをオープンさせている現状がある。
その一方で百貨店の不振は続く。40年近く親しまれてきた「地元のデパート」的存在の「伊勢丹吉祥寺店」は2010年3月に閉店。12月には「西武有楽町店」も閉店する。「多種多様の商品を店側が選び、販売する」という百貨店ならではの利点を、駅ナカに取って変わられた形となった。
駅ナカ人気に応えるように、駅ナカの店舗も高級化が進んでいる。高級チョコレートの代名詞として親しまれているゴディバは3年前にJR新宿駅西口の改札近くに店舗を設置。当初は設置しても成功しない、と危ぶまれていたが、デパ地下に行く予定のない通勤客がふらりと立ち寄り、今では行列ができることもあるという。ゴディバはその後もJR東京駅や東武柏駅などの改札近くに店舗を設置。客単価こそデパートに劣るものの、これまでゴディバに縁のなかった男性客など、新たな客層の取り込みに成功し、売り上げは上々だという。
他にも、有名化粧品ブランド「ロクシタン」や高級ブランド「ルイヴィトン」なども首都圏の駅に店舗を出店している。駅ナカという敷居の低さを逆手に取り、新たな客層を獲得しようと駅ナカに出店を試みるブランドは今後も増えそうである。
確かに百貨店だと着ていく服などにも気を使うが、駅ナカではそのようなことも気にせずに気軽に店舗見学が楽しめる。入ったからには買わなければいけないという強迫観念もない。デパートが持つ利点と駅が持つ気軽さを併せ持った駅ナカは、今後巨大なマーケットと化すかもしれない。
駅消費研究センター